top of page

『マツやんの 10倍ワーニャ伯父さん』#5

いやしかしどうしたもんでしょうかね。

(〜前回まで~

『翳りの森』の原作『ワーニャ伯父さん』を読み進めるブログ だけれど、公演メンバーに”面白い所”をきくだけで3回分使った〜)

 5回目で、あらすじ紹介もまだだっていうのはね。公演も、あと8日で始まる、まだ、メンバーへの質問した在庫が残っている。

 あらすじ、あらすじ紹介くらいはせめて・・・どうにかして・・・『翳りの森』の原作なのだから・・・。

 あれ????

 和枝は伯父の平尾と二人で静かに暮らしている。そこへ、平尾がかつて恋した女性・恵理奈が、夫の老教授とともに引っ越してくる。恵理奈に言い寄る平尾だが、いっぽうで和枝は、教授の往診に通う医師・佐橋に恋をしていた…….

 これは、『翳りの森』のあらすじです。​

 ソーニャは伯父のワーニャと静かに暮らしている。そこへ、ワーニャがかつて恋した女性・エレーナが、夫の老教授セレブリャーコフとともに引っ越してくる。エレーナに言い寄るワーニャだが、いっぽうでソーニャは、教授の往診に通う医師・アーストロフに恋をしていた…….

​ 

 できました。

 これが、『ワーニャ伯父さん』のあらすじです!!!

「古いですね。世代ですか?」

 そうです。まあ、なにより、

くわしいあらすじはウィキペディアに、載ってるんですから・・・ええ・・・・それは・・・・・もう・・・・・・。

 では、安心して、質問の残りを消化しにいきましょう。

(息を吸う)

八百屋風タイトル

 ではラストー。

『ワーニャ伯父さん』の面白いところを教えてください」

演出助手:古田希美恵 

「テレーギンが楽器を弾くところ」

 弾くよねー。

 直接ドラマには組み込まれないひと、テレーギンといったら、おおよそギターの人と言っていいくらいです。

 まず第一幕、昼下がりのお茶の会から、テレーギンはギターを弾くのです。

 テレーギン、ポルカを弾く。一同だまって聞き入る。

 そんな時間が書かれている。舞台劇で、そんな楽器演奏のみの時間を指定するのはなかなかなことだ。まさしくギターの人だ。

 ただその直前は

エレーナ いいお天気だこと、きょうは。……暑くもなし。……

  間。

ワーニャ こんな天気に首をくくったら、さぞいいだろうなあ。……

 テレーギン、ギターの調子を合せる。

 という具合ですが。これはどうなんだ。

 つぎにテレーギンのギターが登場するシーンはというと、第二幕。

 アーストロフがチョッキもネクタイもなしのフロック姿で登場。一杯機嫌である。あとからテレーギンが、ギターをかかえて出る。

アーストロフ おい、弾けよ!

テレーギン 皆さん、おやすみじゃないか。

アーストロフ いいから弾けったら。

 テレーギン、そっと弾く。

 弾かされた。夜に、ひとりだけのために。

 ここからはしばし、ワーニャ伯父さんとアーストロフが、美貌の人妻エレーナをめぐって会話を戦わせ・・・

(ちょっと長いです)

アーストロフ 女が男の親友になるまでには、こういう手順がいるものだ。――はじめは友達、それから恋人、さてその先が親友。

ワーニャ 俗物哲学だ。

アーストロフ へえ? いや、なるほど。……白状すりゃあ、僕もそろそろ俗物の仲間入りさ。現にこのとおり、結構酔っぱらいもするしね。まあ大抵ひと月に一度は、こんなふうに深酒をする。そして、酔っぱらったが最後、僕は思いっきりもう、ずうずうしい鉄面皮になる。僕の目には世の中が一切合財いっさいがっさい、一文の値打ちもなくなってしまうんだ。うんとむずかしい手術にも平気で手をつけて、ものの見事にやってのける。どえらい未来の計画を、でっち上げてみたりもする。そうなるともう、自分がただの唐変木とは思えなくなって、天晴あっぱれ人類に偉大な貢献をすべき人物に見えてくる……偉大なる貢献をね! そうなったらもう、僕独特の堂々たる哲学体系が出現して、君たち仲間はみんな、虫けらか微生物みたいに見えてくる。(テレーギンに)ワッフル、弾けよ。

テレーギン そりゃ、あんたの頼みだから、わたしゃ喜んで弾くけどね、まあ考えてもごらん、――家じゅうみんな寝てらっしゃるじゃないか。

アーストロフ まあ弾けったら!

  テレーギン、そっと弾く。

 弱い。

 そんな扱い。だいたい、こんな話をしながら、横にいるのにぜんぜん気にされてないのがテレーギンの存在感だ。

「あばた面」のことを、ワーニャやアーストロフから「ワッフル」とあだ名されもしています。

 そうして下層におかれて、さびしさを漂わせつつ、しかし、のどかさも担当。

この戯曲の第一幕は、ワーニャ伯父さんがエレーナに言い寄る場面でおわりますが、そこでも・・・

ワーニャ (前略)僕は、何もいらない。ただあなたの顔を眺め、あなたの声を聞くことさえできれば……

エレーナ しっ、人が聞きますよ! (家へはいろうとする)

ワーニャ (あとを追いながら)好きだと言ったっていいじゃありませんか。どうぞそう邪慳にしないでください。それだけでもう、僕はほんとに仕合せなんです。……

エレーナ ああ、困ったわ。……(二人、家の中へ消える)

 テレーギン、ギターの弦を打って、ポルカを弾く。ヴォイニーツカヤ夫人はパンフレットの余白に何やら書きこんでいる。

 まだ弾いてる。

 言い寄りはお茶のテーブルから離れた、お庭のテラスの方でやってて、少し距離があるとはいえ、あからさまに作者は対比をしてますよねえ。

 前回も触れた ワーニャの拳銃ぶっぱなし事件後にくる第四幕冒頭では、

(前略)――秋の夕暮。静寂。  テレーギンとマリーナ、向い合せに腰かけ、靴下の毛糸を巻いている。

 ドラマの外側にいることをハイライトするように、わざと近接して置かれてるようでもあります。小休止、軽い狂言回し。

(補足すると、なぜト書きに表記ぶれがあるのかわからないが「マリーナ」と「ヴォイニーツカヤ夫人」は同じ人です。ワーニャの母親である婆さん。そこと、いつもセットなのか。)

 さいごもう一度、テレーギンの身の上話をききましょうか

テレーギン まあ、お聞きよ、ワーニャ。わたしの女房は、このわたしの男っぷりに愛想をつかして、婚礼のあくる日、好きな男と駆落ちしてしまった。けれどわたしは、その後ごも自分の本分に、そむいたことはないよ。今になるまでわたしは、あれが好きだし、実をつくしてもいるし、できるだけは援助もしてやっている。あれと好きな男のあいだにできた娘の養育費に、わたしは財産を投げ出してしまったんだよ。そのため、わたしは不仕合せにゃなったが、気位だけは、ちゃんとなくさずにいる。ところが、あの女はどうだ。若さとも、おさらばだ。人間のご多分にもれず、器量も落ちてしまう。好きな男には、死なれてしまう。……いったい何が残ったろうね。

 もしテレーギンがドラマへ関わるとしたら、

 第一幕前半に登場するこれは、エレーナをめぐる愛憎劇への、劇全体への、示唆なんでしょうか???

 さてそんなところで。

公演メンバーへの質問は終了しました。

 まとめると、

『ワーニャ伯父さん』は、

「みんな不満ばっかり」で、「よく喋」り、「女性がすぐ泣く」わ「いきなり素麺」が出てくるわ、「テレーギンが楽器を弾く」とかあって、ひっくるめて

「全部」面白い劇(戯曲)です。

 でした。

 さて、やることがなくなりました。

 次回はどうしましょう?

 ひとつ、テレーギンのことばっか説明してて思ったんですが、ためしに「ワーニャ伯父さん」の身に起こることだけを説明していったらどうなのか。

 ワーニャ伯父さんのプロフィールを紹介する。

 そのプロフィールは劇が始まるところまで、ではなく、もちっと詳細で、劇中の出来事まで含めての説明にする。

 この劇は、悲劇のようですが、チェーホフからいわせたら「喜劇」かもしれない。

 それは、視点の置き所、どの登場人物に寄るのか、あるいは寄らないのか、によって変わるのかもしれない。

 ワーニャ伯父さんの主観からまとめてみる。

 する、と、どうなるでしょうか。

 とりあえず次回。。。。。。やる。かも。。。。

 でもなあ、突然、もっと気楽なロシア料理紹介グルメブログとかになってるかもしれませんが。

※引用は、青空文庫『ワーニャ伯父さん』(神西清・訳)

(http://www.aozora.gr.jp/cards/001155/files/51862_41345.html)より、させていただきました。


記事一覧

bottom of page