『緑茶すずしい太郎の冒険』週直日誌#7 「越寛生インタビュー 前編」
(劇)ヤリナゲ『緑茶すずしい太郎の冒険』まで、あと3日になりました。
いよいよ明日より、ヤリナゲは王子小劇場入りします。
まだまだ、すべての回で席はご用意できます。序盤の回は埋まっておりますが、後半はまだまだ余裕がございます。ご予約はこちらから。
今回は、(劇)ヤリナゲの主宰であり、作・演出の越寛生に、今回の公演について、そして、今回の公演はヤリナゲ初の再演であることを含めて、初演時から現在までについてを伺いました。
(越寛生)
ーー 今回の『緑茶すずしい太郎の冒険(以下、緑茶)』はヤリナゲ初の再演になりますが、なぜ再演をしようと思ったのですか?
越寛生(以下、越):この公演をやるのが決まる頃、お話を書くのが大変だ、って思っていて、お話を書かないでもできるやつにしよう、って思っていました。今は、また書きたいことがあるんですけれど、当時はちょっとお話をもう書きたくなかったので。そうなると、再演か、既成脚本を使うということになります。その時、王子小劇場で『緑茶』ってやってないし、割と自分でやって面白かったなぁ、って感触があったんですね。
2014年に荻窪小劇場で初演した時(詳細→http://yarinage.wix.com/suzushiitarou)に、たまたま王子の当時の芸術監督の玉山悟さんが見にきてくれてて「これ面白いから王子でやりませんか?」って言ってくれたんですけど、示された日取りが、二ヶ月後、三ヶ月後とかだったから、できなくて、その時、『非在』をやって、『スーサイド』やって『206』とやって、とやってきて、今に至ります。その間に玉山さんは辞めてしまったんだけれど(笑) どこかであの時「面白いから王子でやってよ」って言葉が残ってた、というのもあります。ちょっと、美談めかしてるけれど。今思うと、いつかやろうとはどこかで思ってたんですね。
あと、今回主演の三澤さんを王子小劇場の新年会で見た時に、『緑茶』の主人公の一人であるウーロン茶熱い花子を是非演じてほしいな、って思ったんです。花子ちゃんは、割と僕のイメージだけれど、すごく生きづらいというか、言いたいことが言えない人だな、って思っていて。それは、遠慮とか気遣いとか自意識とかが働いているからなんだけれど、なんかそれをやってもらいたいな、すごく合うだろうな、と思ったんです。女子会でも触れられていたけれど、舞台美術の人が賞を受けたのを代理でもらった時に、こんな感じで喋っていて。(立ち上がって)
こんな感じで喋っているから、おそらくそういう生きづらさというか、言いづらさがあるんじゃないか、と思って。
それで、当時、新たな脚本じゃないものでやりたかった、ということと、三澤さんに熱い花子で出てもらいたい、というのが決まって、それで、『緑茶』を選んだ、という感じです。
ーー2年前の台本を読みなおして、当時書きたかったことと現在の違いはどのようなものがありましたか?
越:一番の軸、だと思っていることはぶれてないんですが、「変わったな」と思うことが2つあります。1つは軸がなんなのかが前はぼんやりしていたんですが、今ははっきりしたということ。もう1つは、軸がはっきりしたことによって、その時はとりあえず書いていたみたいなことが、その軸を表すにはそぐわないんじゃないか、っていう風に判断がつくようになったことです。
初演の時は、言いたいこと、抱えているもの、が、すごくぼんやりとしてるんだけれど、 がんばって説明しようとした結果、こういうお話になりました。という感じだったけれど、今は、再演するにあたって、ぼやーんとしたものが、「とりあえず、これなんじゃないか」っていうことはいえる。前はすごく言葉を尽くし続けることがあったのを今は、もう少し的確に表せるようになったかもしれないです。
例えると…、なんか、大豆を放っておいたら納豆になった、っていう話があるじゃないですか。2年前は、「なんかおいしいものができるよね」って放っておいたけれど、今は、納豆になる理由がちょっとわかった気がするから、納豆をただ放っておくだけじゃなくて、より効率的においしい納豆にするためにはこうしたらいいんじゃないか、ということを試せている状態です。
ーー初演について、覚えていることはありますか?
越:うーん…。あんまりないです…。
あ、当時、自分で作った演劇をやるのは、1年ぶりでした。
あと、初演でウーロン茶熱い花子を演じた西村寛子さんが、パン屋さんでパンを選んでて、その顔が超怖かったというのは、すごく覚えてます。
ーーこの二年を通して、「変わらなかった軸」ということについて、なんども言及されていますが、もう少し教えてください。
越:なんか、ちょっとわかったことは、作品自体というか僕の話なんですけど、僕が思ってること、というか、態度、って伝わらないんだ、っていうのが、わかりました。
昨日も稽古場で話したのだけれど、思っていることと違うことをすること、ってあるじゃないですか。例えば、社交辞令とか。私はそういうことがとても苦手なのですね。でも、それができるようになるためには、「勝手にできるようになる」、か、「なんか苦労して身につけていく」しかないんじゃないかと思うんです。どちらかというと、僕は後者の「苦労して身につけていく」方だとおもうんだけれど、まだ身につけられていないで、うわーって、つまずいている。でも、前者だった人はさくさくっと普通に歩けたところで、僕はつまずいているから、「早く立って歩きなよー」って言いたくなると思う。だから、「勝手にできた」人は、自分がつまずいたところにそもそもつまずいていないで歩いているんだ、ということや、僕はその人たちに比べてつまずいている側なのだ、ということを最近意識するようになりました。
ーーヤリナゲは、社会問題をテーマに選ぶことが多いですが、それも越さんの「つまずき」と関係があるのでしょうか?
越:多分、今の延長で、例えば、今回の出生前診断でいったら、割とつまづかずにその問題を素通りできる人もいるが、なんか僕はひっかかっちゃった、つまずいちゃったんですね。
出生前診断については、なぜか高校生くらいから、関心があったんです。なぜなんでしょうか…。
なぜだか知らないけれど、昔から興味があった問題なんですけど、今思うと、僕が「つまずいたこと」に関係があったってことなんじゃないかなぁ、と思います。
前編はここまでです。後編では、近年の作品についてや、今回の演出について、参加キャストの印象など様々なことを聞いていますので、そちらもぜひお読みください。
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。