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『緑茶すずしい太郎の冒険』週直日誌#6 「インタビュー女子会 後編」

こんにちは。『緑茶すずしい太郎の冒険』週直の中村です。ヤリナゲは現在、王子小劇場近辺の王子スタジオにて稽古をしています。まもなく劇場入りです!チケットまだまだ発売中です。埋まってきておりますので、こちらよりぜひお買い求めください。

『緑茶すずしい太郎の冒険(以下、緑茶)』出演の女優たち4人による女子会、今回は後編です。

それぞれの家族のエピソードをうかがっていますが、発展して、今回の話の根に触れていくような部分もあります。ぜひお読みください。

(左から、中村あさき、伊岡森愛、國吉咲貴、三澤さき)

ーー今回の『緑茶』は”母と子”に焦点を当てて描かれている、ということで、みなさんの”母と子”のエピソードを教えてください。

國吉咲貴(以下、國吉):私は、お弁当です。

(國吉咲貴)

お母さんが毎日つくってくれたんですよ。高校のとき。いや、今日も作ってくれてるんですけれど、…冷凍食品ばっかですね(笑)。

高校のときは、ごはんの上に毎回、海苔とかふりかけとかで、「ファイト」とか「がんばれ」とか書いてくれてました。私、友達全然いなかったし、結構辛かったのでお母さんなりに気にしてくれてたんじゃないかなーって。私が自分の個性について悩んでいた時は、「十人十色」って書いてくれましたね。まじかー、聞いてるんだなー、って思いました。

でも、一ヶ月経ったときから、なんか疲れたらしくて、昆布が三個乗った顔みたいなのになっていって…。 でも、毎回その顔の形とか、具とかは変わってましたね。

三澤さき(以下、三澤):今思うと…っていうことは、すごい、あるよね。当時はすごく嫌だったけど、今思えばな、って。

だから、恋人とか友達とか、当時嫌だったことも、今思うと、「あ、あれ、わたしのためにしてくれたんだな」って気づくことはあるけど、当時嫌なことされると疎遠になっちゃってたりして。家族は、切りたくても切れないから、遡って感謝できる…っていうことは私もあります。

三澤:じゃあ、私はこれで。

これ多分干支の巳年のやつ=蛇で、もう片方は、鉄の馬なんですけれど。

全然意味がわからないんですよね。

私の実家は長野で、お米作ってるから、お米くれって言ったら送ってくれるんですね。5kg10kgとか送ってくれるんだけれど。ダンボールの上に隙間ができるから、毎回、こういったものを詰めて送ってくれるんです。ソーラー電池のまねきねことか、あとスカイツリーのキーホルダーとか!スカイツリーは東京にあるから、多分東京にきたと思うんですけれど、来たなら教えてよ!って思って。毎回こういう品が入ってくるから、ガチなのか、ギャグなのかもわからないし、メールが苦手なお母さんだから、「これなに?」とかも聞けなくて。

中村あさき(以下、あさき):実家はそういうものがもともとたくさんあるお家なの?

三澤:いや、そうでもない。うちの母親はお花の先生だから、花関係のものはいっぱいあるんですけれど。でも、なんだろう、多分考えて送ってるんだろうとは思います。

國吉:あ、でも、それで、思い出したんですけれど、なんだろう、私も舞台の小屋入りしてる時に、お母さんも一緒に小屋入りしてくれたんです。それで、私が舞台の人と打ち合わせして劇場内にいない時に、全部片付けをしてくれたんですね。 でも、変なところを片付けるから、翌日どこだどこだ、ってなったり、あとは、衣装が汚いから洗濯しようと思ってくれたみたいで、本番前に衣装が洗濯しているからない!ってなったり。

三澤:なんなんだろーねー。

伊岡森愛(以下、伊岡森):私はこれ、というものじゃないんですけれど…、収集癖があるんですよ。

(伊岡森愛)

これは全部家族と一緒に行ったところのものなんですけれど…捨てられなくてとっているんですね。シールとか道に落ちてるBB弾とかポケモンの指人形とか、そういうものも全部集めてたんですけれど、あるとき汚いかも、って思って、捨てちゃいました。でも、紙関係はとってあって。…こうやって集めたのを見てみると、いろんなところに連れてってもらったなあ…って思いますね。。そういえば、この前テレビでやってた「八日目の蝉」という映画を見てたんですけれど、母親が隣で泣いてて。「いろんなところに行って、いろんなものを見せたかった」っていうセリフで泣いたらしいんです。

あさき:親がすてられないのはわかるけれど、子供が、っていうのは珍しいね。

伊岡森:それと…、わたし、幼稚園ごろからずっと見る夢があって。建物でジェットコースターに入っていって、建物の外に出て行くという夢で。すごく何度もいっぱい見てるから、ある日、お母さんに話したことがあるんですけれど、そうしたら「あなた、そこに連れてったことあるよ」って言われて…、私、連れて行ってもらった場所覚えてなかったんだな…って、結構反省しましたね。。

あさき:私のは、エピソード、って感じじゃないかもしれないんだけれど。

(中村あさき)

 私はお母さんとすっごい似てるんですよね。見た目もだし、声も。電話で話している時は、どっちがどっち、って思うんですよ。本当に。(笑)頭脳派というよりは、どちらかというと感覚派なところとかも似ています。そうやって、お母さん大好きな育ち方をしているタイプで。 

 で、そこから話したいことなんですけど、親の教育って、子供のすべてを作るじゃないですか。今、私が持っている価値観とか倫理観って、私が育つ過程で、いろんな人に会って、自分の考え方を疑ったこともあるけれど、それ以外のものは全部、親…私の場合は母親の教育そのままなんですよね。 

 今回、『緑茶』の再演をやるということになって、初演よりもだいぶこっしー(編注:ヤリナゲ主宰越のあだ名)が作る過程での悩みみたいなものが、より理解が深まっているつもりなんだけれど、それで、『緑茶』のテーマに「障害」ということがあると思うんです。そこについて、自分の考え方、というか、倫理観を照らそうとした時に、どうしてもお母さんがこれまで自分に教えてきたことを思い出してしまって。 

 というのも、私のお母さんは、今は子供たちと音楽遊びをする音楽療法士として活動しているんですけれど、私が子供の頃には、ダウン症と自閉症の子供たちと遊ぶボランティアをしていて、その現場に私も時々連れて行っていたんですね。そこで、お母さんが本当にいきいきとそこで働いていて。私はお母さんに「社会で生きてゆくときの偏見は持ってはいけません」っていう感じに育てられたんですよ。これは障害のある/なしだけではなくて。小さいときに、何にもよく知らずに、みんなが言っているから一緒に「男の子同士が好きなの気持ち悪い」、って言ったらすごい怒られたんです。

 そういう風に育てられてきたから、ある意味、わたしは倫理観というものがしっかりある方だと思うんですよ。「悪いことを思ってはいけない」とか「こういうことは偏見だ」とか、「いろんなものを受け入れなけれないけない」とか、そういうことに対して違和感がない。

 でも、じゃあ、それこそ、『緑茶』のように、「障害のある子供を産むのか」ってなったときに、私は迷ってしまうんです。

 稽古場で、こっしーが役者のみんなに聞いてたんですよ。「アンジェリーナ・ジョリーが胸を切ったことに対して賛成か反対か?」みたいなことから始まって、「お腹の子供が将来死んじゃうかもしれないってなったときに、治療ができるとしたらしますか?」っていう問いもあって。 お腹の中に針を通すのが嫌だ、みたいな感覚になるのか、それとも、ダウン症や障害がある子供を直したいのかってはなしになって、そのときにわたしと三澤さん以外は、「じゃあ、こうします」って言えてたんですよ。 自分は、そのときいろいろあって答えられない、判断できない、という状態になって。稽古場で判断をつけられた人は、その人なりの価値観があったからできたことだと思うんですけど、私はその価値観が定まっていなくて。障害を持つ子供を産むことをマイナスにとらえるきもちもわかるし、でも、それに対して「本当にそうなのか?」とも思うし、それ自体が感覚としてはあるんだけれど、それはお母さんの教育の結果の倫理によっているものじゃないのか?とも思うし。 

三澤:私は、「わかんないよー」ってなって、なんか泣いてしまったんだよね。 

國吉:稽古で聞かれた時、わたしは決断できたんですけれど、それとは変わってきているかもしれないです。あの時は、その問題はわたしと子供のことだと思ったけど、実際には旦那さんがいるんだなぁ、って思うようになってきました。例えば、仮に私に付き合っている恋人がいたとして、その人のことがすごく好きだったら、わたしは相手とわたしの子を障害を持っていたとしても、認めちゃうというか、そういうこともあるんじゃないか、って。

伊森岡:私も、多分、今は相手がいる実感がないから、子供のことを自分の一部、として認識していたのかもな、と思います。。自分の一部だから、選択肢として捉えられていた、というか。

あさき:今の自分はどっちにも寄れないんです。だからこそ、今回の『緑茶』は、私のお母さんにすごく見て欲しいですね。初演も、確か観ているんだけれど、そのときいろいろと意見を言われて、それに対してなにも言えなかったんです。今回は、もう少し私の考えというか、態度を示せると思います。

ーーありがとうございました。

(劇)ヤリナゲ『緑茶すずしい太郎の冒険』開幕まであと4日です。今週の木曜日から。序盤から埋まってきていますが、まだご予約できます。お得な割引もあります。こちらを確認してみてください。

次回は、(劇)ヤリナゲ主宰の越寛生の単独インタビューをお届けする予定です。ぜひお読みください。


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