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「206」日直日誌#8 「良太さんとあさきさんに話を聞く。前編」

こんにちは。「206」日直の中村です。

 今回は(劇)ヤリナゲのメンバーである川村良太さんと中村あさきさんにお話を聞きました。ヤリナゲはどのように始まったか、などなど、普段あまり語られない団体としてのヤリナゲを伺いました。

 今回も前後編です。ぜひ後編も読んでください。

 また、今回は日直の中村と、中村あさきさんの苗字が同じなので、表記を名前にて統一しました。

(中村あさきさんです。あんぱんを食べています。) 

——お二人がヤリナゲに関わったきっかけを教えてください。

川村良太さん(以下、良太):越・僕・あさきは同じ大学で知り合いました。僕が最初に入ったのはミュージカルサークルでした。歌唱指導と作曲をしていたある公演で、男の役者がなかなか見つからず、稽古場で代役をしていました。一時間半のミュージカルで、1分か30秒の出演が3回だけの歌もない役で、結局本番まで役者が見つからず出演し、それを観に来ていた越が「川村さんのおじさんが面白かったです。」とだけアンケートに書き残していました。それが出会いです。そのあと、越に誘われて(劇)ヤリナゲの第一回公演『八木さん、ドーナッツをください。』(以下、『八木さん』)に出演しました。

中村あさきさん(以下、あさき):こっしー(ヤリナゲ主宰・越さんのあだ名)とは、大学の照明委員会で出会いました。それで、「劇をやるから出てくれませんか」と言われて、『八木さん』に出ました。それが初めての演技で、面白かったです。

私はセリフを覚えるのが今でも苦手なんですけれど、『八木さん』の時に、まだ覚えてない時点で、台本外してって言われたことがあったんです。とても怖かったんですが、こっしーに「結果的にまぁまぁいろいろあって怒ればいいから!」と言われて、セリフは出てこないけれど、言いたいことは言える、という不思議な体験をしました。『八木さん』のシーンは今でも覚えていて、カラオケにて私が怒り出すというシーンを特によく思い出します。 

——お二人とも、当初は演劇をやるつもりはなかったとのことですが、何故ヤリナゲのメンバーになられたんですか?

良太:最初に「八木さん」の脚本をもらったとき、自分には面白さが全く分からなかったのですが、結果、お客さんに受けた。自分のセンスとして感じられないところで、評価を受けていたので、すごいんだなーと思いました。それ以降、越に呼ばれたら出るようにしています。ただ『非在』までは、毎回出るけどメンバーではなく、なんなら才能があり作品として出せる越に対して劣等感を持っていたんですが、『非在』以降、自分が演劇に真剣に取り組み出し、「あ、なんか別に、割と越とは対等な関係になれるな」と思ってメンバーになったんです。

あさき:それはこっしーの演出が変わってきてる部分もあるんじゃないかな、と思います。『八木さん』の頃は、「自分の書いたものが面白くて、その時点である程度理想像はできている」状態だったんじゃないか、と思うんのですが、今は「その場において役者から出てくるものを拾い出そうとしている」部分がある気がします。 

そういう意味で、こっしーの方からも役者に頼る部分も増えてきたんじゃないかなぁ、と思いますね。

あさき:私は、学生時代から、色々な人から出演の依頼がきても、すんなり「はい、やります」って答えられない部分があるんですが、こっしーのときは断れないなぁ、といつも思ってしまいます。素直にこの人とだったらやりたい、って思って、「少し考えるけれど、オッケー」と答えてしまうんですね。それがなぜかその頃はわかってなかったんですが、最近、私は、こっしーの作るもの、いうことなすこともそうですが、越寛生という人間自体への興味が絶えないんじゃないかな、と気づきました。

ずっと誰かに興味が絶えないということはあんまりないとおもうんだけれど、こっしーは変わらず、面白い、興味深い対象である。という感じ。これから何を言っていくんだろう、ということが聞きたい、とかはあると思います。

ヤリナゲをやっていていつも特有の感覚を覚えることがあって、それは、自分が知らない自分をすごくほじくられている感じがします。例えば「この人はこういうイメージだからこういう役やらせたい」ってことはあるけれど、それはいつも私がいろんな人に抱かれるイメージのままやることが多いんですが、こっしーの場合は、必ずしも、私が知っている私のイメージではない部分をほじくられることがあって、私としてはやっていて、いつも簡単じゃないです。毎回、違う体験をしています。 

こっしーの演出家としての役者自身の魅力を引き出そうとする意欲はとても強いと思います。「この人はこうすると魅力的に違いない!」という部分を見つけたり、ほじくりだしたりするのが上手なので、だから、任せちゃえって思える。

——お二人のヤリナゲにおける役割や立場などを教えてください。

良太:ブレーキ役だと思っています。越は、予算などについて頭に全くないときがあるので、それを全体を見て整理したり、越がばーっと楽しいがままに言っていることを通訳したりします。

あさき:こっしーはすごく繊細な感覚の持ち主なんです。どれが良くてどれはダメ、というものが、みんなにわかりやすいものではない。それは感覚的に見えたりすることもあるけれど、こっしーの中ではすごく考えたり、整合性のある世界観なんだと思います。でも、それが絶妙なラインだったり、するから、一発で言葉で伝わることがあまりないし、私もわからないことはよくあります。

良太:僕の役柄としては、例えば、宝石の台座や絵の額縁のような役割がある気がします。

あさき:少し言い方が悪いのかも知れないのですが、「そんなに大事には見えないのだけれど、いなかったら、物語的に困る、便利な役割」みたいなポジションが多いな、とは思います。良太はどんな役柄でも割とできるということで、兼役が多いんですよね。こっしーと良太を見ていたら、越にとって良太は頼る存在なんだな、と思います。

あさき:私がヤリナゲで演じる役割については、二つくらい共通しているなと思うことがあります。下手でも可愛ければ済むっていう役、かつ、いいとこどりみたいな役が多い印象です。「見に来た人にとってはヒロインに見える」というような。

良太:あ、僕はあさき輝かせ係か、って思ったことはあります。直接シーンで一緒にいるいないは関係なく、役者のバランスを見たときに、自分がいることで、あさきが聖なる存在に近づく部分はあるな、と。

あさき:ヤリナゲで「美人、変人、客演陣」という宣伝文句を使いますが、越は美人をわたしに、変人を良太に担わせているのかも。

良太:あとは、越が作品を創る上で感覚の部分をあさき、論理の部分を自分が拾って補完しているような気がしますね。

 前編はここまでとなります。後編では、「206」についてのお話をたくさん伺いました。ここまでお読みいただきありがとうございます。後編もぜひお読みください。


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